君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
それでも――このまま逃げていたら、本当に何も変わらない。
だからせめて、今日だけは。
――逃げる途中でも……少しだけ顔を上げてみようかな……。
鏡の中の自分を見つめながら、晴菜は小さく息を吐いた。
***
待ち合わせは、京都の中心にある格式高いホテルの日本料理店だった。
重厚な木の香りと、白檀の匂いが混ざり合うホテルのロビーには、静かなピアノのBGMが流れていた。外の喧騒が嘘のように、その場所だけ時間がゆっくりと流れているようだった。
ロビーの受付で予約名を告げると、すぐに案内係の女性が柔らかな笑顔で一礼した。
「ほな、うちら通してもらいましょ」
紫色の留袖を着た仲居に案内され、晴菜は華子の数歩後ろを歩いた。通路の絨毯は草履の音を吸い込むほど厚い。晴菜は緊張から、手元の袖を無意識に指でつまんだ。
長い廊下を抜ける途中、庭の景色がちらりと目に入る。苔むした石灯籠、ゆるやかに流れる小さな滝、風に揺れる竹の葉――京都の夏を閉じ込めたような静けさがそこにあった。
「こちらのお部屋でございます」
仲居が襖を開けた瞬間、冷気とともに檜の香りがふわりと流れ出た。薄く流れる琴の音がどこか遠くから聞こえてくる。
黒い艶やかなテーブルの向こうに、スーツ姿の男が二人座っていた。
右側の男性と視線が絡み合ったその瞬間、思わず息が止まった。
――え……。
一瞬、晴菜の心臓が大きく跳ね上がる。視界がわずかに揺れて、男の輪郭だけがひどく鮮やかに浮かび上がった。
艶やかな黒髪。長い指先。あの夜、氷の溶ける音とともに交わした低い声が蘇る。
彼はわずかに目を細めながら、唇の端に、晴菜以外誰にも悟らせない微笑みを浮かべていた。
だからせめて、今日だけは。
――逃げる途中でも……少しだけ顔を上げてみようかな……。
鏡の中の自分を見つめながら、晴菜は小さく息を吐いた。
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待ち合わせは、京都の中心にある格式高いホテルの日本料理店だった。
重厚な木の香りと、白檀の匂いが混ざり合うホテルのロビーには、静かなピアノのBGMが流れていた。外の喧騒が嘘のように、その場所だけ時間がゆっくりと流れているようだった。
ロビーの受付で予約名を告げると、すぐに案内係の女性が柔らかな笑顔で一礼した。
「ほな、うちら通してもらいましょ」
紫色の留袖を着た仲居に案内され、晴菜は華子の数歩後ろを歩いた。通路の絨毯は草履の音を吸い込むほど厚い。晴菜は緊張から、手元の袖を無意識に指でつまんだ。
長い廊下を抜ける途中、庭の景色がちらりと目に入る。苔むした石灯籠、ゆるやかに流れる小さな滝、風に揺れる竹の葉――京都の夏を閉じ込めたような静けさがそこにあった。
「こちらのお部屋でございます」
仲居が襖を開けた瞬間、冷気とともに檜の香りがふわりと流れ出た。薄く流れる琴の音がどこか遠くから聞こえてくる。
黒い艶やかなテーブルの向こうに、スーツ姿の男が二人座っていた。
右側の男性と視線が絡み合ったその瞬間、思わず息が止まった。
――え……。
一瞬、晴菜の心臓が大きく跳ね上がる。視界がわずかに揺れて、男の輪郭だけがひどく鮮やかに浮かび上がった。
艶やかな黒髪。長い指先。あの夜、氷の溶ける音とともに交わした低い声が蘇る。
彼はわずかに目を細めながら、唇の端に、晴菜以外誰にも悟らせない微笑みを浮かべていた。