君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
奏汰はそう口にして、鮮やかな青いネクタイの結び目をわずかに緩めていく。
戸惑いと警戒と、確かな熱が晴菜の脳内に渦巻いていた。
「どうして……どうして、あなたがここに……」
晴菜は、震える声でやっとそれだけを絞り出した。膝の上に乗せた袖をぎゅっと握るものの、自分でも抑えきれない手の震えはどうしようもなかった。あの夜の空気が、濃密な記憶となって否応なしに脳裏に押し寄せてくる。
彼はわずかに首を傾げ、その笑みを深めた。
「俺の見合い相手があんただって、鎌倉で会った時点で知ってたよ」
バリトンの声が、懐かしいほど甘く、それでいて逃げ場を与えない。
「知って、た……?」
あの夜、互いに名乗りさえしなかった。ただ少しだけ話をして、ほんの短い時間を共に過ごしただけだ。名刺交換をしたわけでも、素性を尋ね合ったわけでもない。ただ酔いにまかせて、知らない人に弱音を零しただけ。あれで晴菜を見合い相手と特定するなんて、不可能なはずなのに。
喉を引き攣らせた晴菜をよそに、奏汰はふっと口の端をつり上げた。
「写真。去年の一周忌の時の家族写真。縁談ならうちの姪っ子をどう? ってな。その写真に映ってたあんたのえくぼと左目の泣きぼくろで、あの夜はなんとなく」
「写真……」
「そう。だけど写真じゃわからなかったな。生身のあんたは、もっとずるい顔してた」
喉の奥がひりつく。心臓が、嫌な意味で跳ねている。
彼の視線が肌を撫でるたび、答えが怖くて息が詰まりそうだった。
「知っていて……知らないふりをしたの……?」
戸惑いと警戒と、確かな熱が晴菜の脳内に渦巻いていた。
「どうして……どうして、あなたがここに……」
晴菜は、震える声でやっとそれだけを絞り出した。膝の上に乗せた袖をぎゅっと握るものの、自分でも抑えきれない手の震えはどうしようもなかった。あの夜の空気が、濃密な記憶となって否応なしに脳裏に押し寄せてくる。
彼はわずかに首を傾げ、その笑みを深めた。
「俺の見合い相手があんただって、鎌倉で会った時点で知ってたよ」
バリトンの声が、懐かしいほど甘く、それでいて逃げ場を与えない。
「知って、た……?」
あの夜、互いに名乗りさえしなかった。ただ少しだけ話をして、ほんの短い時間を共に過ごしただけだ。名刺交換をしたわけでも、素性を尋ね合ったわけでもない。ただ酔いにまかせて、知らない人に弱音を零しただけ。あれで晴菜を見合い相手と特定するなんて、不可能なはずなのに。
喉を引き攣らせた晴菜をよそに、奏汰はふっと口の端をつり上げた。
「写真。去年の一周忌の時の家族写真。縁談ならうちの姪っ子をどう? ってな。その写真に映ってたあんたのえくぼと左目の泣きぼくろで、あの夜はなんとなく」
「写真……」
「そう。だけど写真じゃわからなかったな。生身のあんたは、もっとずるい顔してた」
喉の奥がひりつく。心臓が、嫌な意味で跳ねている。
彼の視線が肌を撫でるたび、答えが怖くて息が詰まりそうだった。
「知っていて……知らないふりをしたの……?」