君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 声を張り上げた瞬間、自分の鼓動が耳の奥で跳ねたのがわかった。晴菜は思わず椅子を押しのけるように立ち上がった。照明のせいかなのか、怒りのせいなのか。視界がほんのり滲んだ。
 強く出たつもりなのに、手が震えていた。怒りなのか、悔しさなのか、自分でも判断できない熱が喉を焼いていく。立ち上がった拍子に膝がわずかに笑ったのも、彼に気づかれていた気がした。
 奏汰は眉一つ動かさず、むしろ余裕たっぷりの薄笑いを浮かべている。

「……へぇ」

 低く落とされた声が耳の奥までじんと響いてくるようだった。自分の意志とは裏腹に肌が粟立った。挑発してくる獣の喉鳴り――そんな、危うい響き。

「引っかけた? あんたが転がり込んできたんだろ?」
「言い方っ……!」
「事実だろ」

 切れ味のいい言葉がぴしゃりと放たれる。悪びれない、謝る気なんて一ミリもない。それどころか、晴菜がどう反応するか見ているようだった。

「……で? どうする気だ、晴菜」

 名前を呼ばれるだけで、肩がぴくりと跳ねた。声が直接、頬に触れたように熱く感じられる。

「お見合いは『家同士』の話でもある。もちろん俺はあんた狙いだが、向こうは向こうで体裁がある。ここであんたが『無理です』って蹴ったら、華子さんがどれだけ気まずい思いするか、わかるよな?」

 叔母の名前を出され、胸の奥がぎゅぅと痛んだ。思わぬ角度から罪悪感を突かれ、呼吸が浅くなる。こんな風に弱点を押さえるなんて、反則だ。

「な、なにそれ……脅し?」
「人聞きわりぃな。ただの現実だ」
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