君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 平然と言い切る声音にふたたび心臓がきゅっと縮こまる。退路がじりじりと塞がれていく感覚が晴菜の全身を包んでいた。彼はテーブルの向こう側にいるというのに、距離がどんどん近づいてくるように思える。

「一ヵ月」
「……え、」

 晴菜の目の前にすっと差し出された、奏汰の人差し指。それがなにを示すのか理解が及ばず、晴菜は数度目を瞬かせた。

「一ヵ月は俺の女でいろ」

 どこまでも強引で、けれどどこか当然のような口ぶりだった。晴菜の中の反発心が大きく膨れ上がるのに、それ以上に呑まれてしまいそうな熱を孕んでいる。

「そしたら親戚関係の顔も立つ。華子さんもお試し期間ってことで納得するだろ」
「一ヵ月……」
「そうだ」

 晴菜の言葉に小さく頷いた奏汰がゆっくりと立ち上がる。ガタリと椅子が引かれる音が、やけに大きく聞こえた。彼の影が揺れて、ゆっくりと晴菜の方に近づいてくる。
 
「俺と付き合って、まだ俺から逃げられると思うなら試してみりゃいい」
「……っ」

 抗えない。選択肢なんてひとつしか残されていない。いつの間にか巡らされていた巧妙な罠が晴菜を取り巻いていた。気づいた瞬間にはもう絡め取られているような、タチの悪い蔓だ。
 トス、と、革靴の音が近づいてくる。熱を帯びた奏汰の指先が晴菜のおとがいに触れ、ゆっくりと上を向かせられる。全身の神経がビリビリと痺れるような錯覚を覚えた。
 奏汰はゆっくりと腰を曲げる。
 
「ま、一ヵ月もいらねぇと思うけどな」

 囁くように落とされた声音には、挑発と揺るぎない自信が静かに混ざっていた。捕食者の余裕を纏った笑みが、まっすぐに晴菜を貫いていく。
 どこまで逃げても、その先で彼が待っている――そんな想像が、晴菜の思考を占領していた。
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