君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 一ヵ月。それはあくまで『体裁』のため――その、はずだった。
 奏汰は、晴菜の迷いなど最初から見透かしているようで、退路を断つかのごとくじわじわと詰め寄ってくる。
 
「ちょっと。さすがに強引すぎません?」
 
 お見合いの日から数日後――仕事終わりの深夜三時。店の前に車を横づけし、「送る」と半ば強引に晴菜を助手席へ押し込んだ奏汰は、どこか愉し気だった。どうやら今日から二週間は都内で集中的に営業をかけてまわる予定で、京都から社用車で出向いてきているらしい。
 
「一ヵ月だけとはいえ、今は俺の女だからな。夜遅い時間帯に無防備に出歩かせたくない」
「っ……俺の、を強調しないで」
 
 晴菜が睨むように言うと、奏汰はハンドルを操りながら、目だけを横に向けて笑った。その笑みは、まるで子どもの反抗を楽しむかのような余裕に満ちたものだった。
 抵抗する言葉だけは勝手に浮かんでくるものの、こうして彼の車に乗ってしまうあたり、相当絆されている自覚はあった。そのことが、晴菜には何よりも悔しい。
 
「いいな、その目。素直じゃない方が俺の好みだ」
 
 軽口なのに、その言葉には熱がある。奏汰のわずかに低くなった声が、車内の空気を濃密にする。
 どう受け取っていいか分からず、晴菜は思わず押し黙ってしまう。
 
 ――あんなの、勢いだった。
 
 鎌倉での夜のことを思い出すたび、身体の奥が微かに疼く。忘れようとするほど、彼の指の感触や体温が蘇ってくる。
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