君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「晴菜の率直な感想が聞きたい。バーメイドの舌ではどういう風に感じるのか。その感想を元に明日からの営業戦略を変えたいと思ってる」

 営業戦略、という言葉に、思わず身構えてしまう。けれど、不思議と胸の奥がじんと熱くなった気がした。

「……そんな大事な判断材料、私でいいんですか」
「いい。むしろ晴菜がいい。酒を『仕事で提供する』側の感覚が欲しい。酔わせる側の視点だ」

 即答してくる声色には、迷いも計算も感じさせない。奏汰の背中を、そして信頼を預けられているような感覚に、なんとも言えないむず痒さを感じてしまう。
 頼られている、と思ってしまった自分が、少しだけ嬉しい。それがどれほど危険か分かっているはずなのに。

 ――私の、感想……
 
 断る理由は山ほどあるのに、なぜか身体が先に動いてしまう。晴菜はお猪口を覗き込み、そっと鼻先に近づけた。
 華やかというより、澄んだ香り。米の甘さがふわりと立ち、アルコールの尖りがない。
 
 ――やわらかい。

 そっと口に含むと、一瞬華やかな香りが鼻に抜け、次に梨を思わせる柔らかな甘みが広がった。それでいて、ただ軽いわけでもない。

「匂いが……すごく優しい」

 奏汰は一瞬だけ意外そうに眉を上げ、すぐに楽しげに口角を上げた。

「精米歩合を調整してる。削りすぎない分、米の輪郭を残すイメージだな」
「……なんていうか、一口目で『すごい!』って驚かせる感じじゃないけど、気づいたらもう一口飲みたくなるって感じ」

 晴菜の言葉に奏汰はふっと息を吐き、口元を緩めた。
 
「想定通りだ」
「……え」
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