君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 振り返ろうとした瞬間、奏汰の腕が腰に回され、ためらいもなく引き寄せられた。そのまま抱え込まれるように、ソファへとすんと奏汰と一緒に沈む。晴菜の脚が座面に触れたのと、背中に硬い胸板が当たったのはほとんど同時だった。
 何もしない、のではなかったのか。晴菜は思わず抗議の声をあげた。
 
「ちょ、ちょっと……!」
「疲れた。少し、このままでいさせろ」
 
 耳元で低く落とされた声は、いつもの強引さよりもずっと静かな声音だった。
 広い胸に背中を預ける形になり、鼓動が伝わってくる。抱きしめる力はそこまで強くない。
 
「抱き枕になっとけ」
「……人を物みたいに」
「代用品が近くにねぇからな」

 それ以上、何も言われなかった。ただ、腕の重さだけが現実で――晴菜は抗う理由を探しながら、目を伏せた。
 テレビもつけず、酒にも手を伸ばさず、ただ静かに呼吸だけが重なる。
 
 ――危ない……のに。
 
 そう思うのに、なぜかこの力強い腕を振り払えない。何もされない夜ほど、どうしてだか彼を意識してしまう。
 背中から伝わる、一定のリズムを刻む鼓動。それが奏汰のものなのか、それとも自分のものなのか、もう判別がつかない。
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