君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 静かなリビングで、シーリングファンの風切り音だけが規則的に響く。時計もないので、時間の感覚が曖昧になっていく。
 奏汰の『何もしない』という言葉に嘘はなさそうだった。腕は腰に回されたまま、触れてくるのはそれだけ。

「……」
 
 強引で、傲慢で、人の都合なんてお構いなし。そう、思っていたはずなのに。
 そんな彼が、晴菜のために無理をしてまで時間を捻出して、こうしてデートに連れ出してくれている。
 晴菜はふっと視線を落とした。腰に回された彼の手の甲をじっと見つめる。

 ――心臓の音が……うるさい。
 
 なんだか、この腕に守られているような錯覚をしてしまいそうになる。彼から立ち上る微かなアルコールの匂いと、それを上書きするような体温。その温もりが晴菜の思考を柔らかく溶かしていく。晴菜はほんの少しだけ、彼に預けた背中の力を抜いた。

 ――危ない、って思ってるくせに。

 もし、今、この手を離されてしまったら。
 この温度が、なくなったら。
 そんなことを考えてしまう自分が、一番厄介だった。
 言葉を交わさない時間が長くなるほど、胸の奥にしまっていた問いが、熱を帯びて喉元までせり上がってくる。
 晴菜は震える唇を小さく開いた。

「ねぇ」
「……ん?」
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