君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 微睡みを帯びた低い声が、耳のすぐ近くで響く。その響きに心臓が跳ねるのを隠すように、晴菜はあえて淡々としたトーンで尋ねた。

「もし、あの時……私が、あなたの写真を見てお見合いを断ってたら、どうしてたの?」

 晴菜の声が落ちた瞬間、背後の気配がわずかに変わった。腰に回された腕に、一瞬だけ力がこもる。
 奏汰は晴菜の首筋に顔を埋めるようにして、ふっと短く、鼻で笑ったような気配を見せた。

「あんたが断ろうが、逃げようが。俺は別の手を使ってでも、あんたを俺の前に引きずり出したさ。仕事の取引先としてでも、偶然を装った再会としてでもな」

 その言葉は、冗談めかしているようでいて、どこまでも本気だった。ダイレクトに突きつけられる執着は、妙に現実的で、逃げ道がない。
 晴菜の腰に回された腕が、静かに位置を変える。抱き寄せるでも締めつけるでもなく、けれど晴菜を離さない意思はしっかり伝わってくる。
 やはり彼は、恋だの縁だの、綺麗な言葉を並べるタイプではなかった。それを改めて突きつけられたような気がして、晴菜の唇からふっと息が漏れた。

「怖いこと言いますね」
「そうか? 俺は『これ』と決めたものは、必ず手に入れる。遠回りだろうが、正面突破だろうがな」
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