君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 奏汰は晴菜の肩に顎を乗せ、耳元に唇を寄せた。この男は、最初から確率を測って、勝ち筋があると判断していたのだろう。晴菜が逃げた場合の分岐ルートまですでに頭の中で組み上がっていて、その上で行動していたに違いない。

「遠回りした挙句に断られたら、諦めるフリはした」
「……フリ?」
「そう。あんたが油断するまでの時間稼ぎのためにな」

 紡がれた言葉に晴菜は思わず苦笑した。
 どこまでが計算で、どこからが本気なのか。油断するまでの時間稼ぎなんて、まるで獲物が罠にかかるのをじっと待つ猟師の言い分だ。

「最低」
「どうとでも。ま、あんたがあの場に出てきたから余計な手間が省けた。それは感謝してるぜ」
「……俺様、ですね。本当に」
「はは。その俺様に絆されて、今俺の腕の中にいるのはどこのどいつだ?」

 言い返す言葉が見つからず、晴菜は唇を噛んでふっと横を向いた。悔しいのに、彼の腕の温もりが心地よいと感じてしまう自分が情けなくて仕方がなかった。
 不意に、奏汰の指先が晴菜の顎をそっと上向かせた。

「……気が変わった」

 薄暗い部屋の中で――彼の鋭い瞳が、逃げ場を塞ぐように晴菜を射抜いた。
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