君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 ゆっくりと唇が離れていき、二人を繋ぐ銀糸がぷつりと切れた。名残惜しそうに、けれど意図的に距離を取るその仕草が、かえって晴菜の胸をざわつかせた。
 
「な、にもしない、って……嘘、だったの」
「あんたがそんな顔するからだろ」
 
 晴菜が咎めるように問いかけると、奏汰は低く息を吐いた。
 彼の瞳には獣欲の焔がゆらりと揺れている。晴菜をここから逃がす気など欠片もなさそうだというのに、臍の上に置かれた手だけが止まっている。

「……ずるい」
 
 思わず零れた本音に、奏汰の口元がわずかに歪む。
 奏汰の唇がゆっくりと耳元へ落ちていく。そのまま耳たぶを甘噛みされ、ぞくりと背筋が震えた。

「自覚ある」
 
 耳元で低く囁く声は、からかうようでいて、欲を抑えきれない響きを帯びていた。
 彼は晴菜の身体を抱きかかえ、ソファへ押し倒した。晴菜を支配しようとする双眸が、眼前でギラリと光っている。
 晴菜は精一杯の抵抗をしようと、目の前の彼をねめつけた。

「とっくに堕ちてるくせに、強情だな」
 
 奏汰の言葉に、胸の奥がひくりと痛んだ。その視線から逃げるように顔を背けても、身体の熱はまったく消えそうにない。

「……勘違いしないで。流されただけ」

 言い切ったはずなのに、声がひどく揺れた。
 認めたら戻れなくなることを、晴菜は本能的に悟っていた。理性で必死に線を引く一方、奏汰に触れられる余韻が思考にさざ波を生んでいく。
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