君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 奏汰の存在が晴菜の心の隙間を埋めて満たしていくのに、どこかで恐怖が残る。この感情は恋なのか、それともただの依存なのか。それを知ることが、なぜかひどく怖かった。
 
「今夜も――流されただけ、か?」

 耳元で、低く甘やかなバリトンが響いた。否定したいのに、思い返せばいつも奏汰の反応を待っている自分がいる。連絡が来ないだけで落ち着かなくなる夜があったことも、もう誤魔化せない。

「あなた、は……人の心を弄ぶのが好きなだけでしょ」
「それが好きならもっと雑に抱いてるさ」
「……」
 
 逃げ場を探すように視線を彷徨わせるが、すぐに顎を取られ強制的に奏汰の方を向かされる。

「目、逸らすな」

 低く命じる声に、晴菜の身体がびくりと震えた。
 真っ直ぐに見つめてくる視線は相変わらず逃げ道を許さない。

「今夜は……あなたに、依存してるだけ……弱ってるだけ」
「便利な言葉だな」
「っ……」
 
 反論しようとしても、喉が詰まって声にならない。怖いのは、奏汰ではなく――自分の心だ。
 奏汰の指が、太腿の内側をなぞる。触れるか触れないかの距離で止まり、焦らすように円を描く。その寸止めが、逆に晴菜を煽った。

「ぅ、あっ……」
「別に、俺のことが好きとか嫌いとか、どうだっていい。ただ――俺を見て、ここにいろ。今はそれで十分だ」

 そう言葉が落とされた瞬間、唇がゆっくりと塞がれた。深くはないが、拒絶を許さない確かな口づけだった。
 晴菜はゆっくりと目を閉じた。信頼できる相手かと問われれば、まだ答えは出ない。けれど、身体の反応は嘘をつけなかった。
 胸の奥で静かに崩れていく防波堤の音が、確かに聞こえた気がした。
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