君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 アスファルトが白く爆ぜるような、刺すような八月の日差しが照りつけていた。
 晴菜は奏汰の運転する車の助手席で、流れていく緑の濃い景色を眺めていた。都会の喧騒を抜け、視界に広がるのは青々とした一面の田園風景だった。

「関東の酒蔵はうちの分家だ。 曾祖父(ひいじい)さんの弟が曾祖父さんと大喧嘩して家を出て独立した。相当派手にやり合ったと聞いてる。『俺は俺の酒を造る』って家を出て、この土地で一から蔵を起こしたそうだ。それが大正の終わり頃。戦後は情勢もあってなかなか経営が立て直せず、地元の盟主に支援してもらったらしい。その影響で名前が氷室から高坂(たかさか)に変わった。んで、俺らの親父の代になって、今さらそんな昔の喧嘩に拘わらんでも、ってことで交流が再開したっつう感じだな」
「……へぇ……」

 一週間前に鮨屋で話題に上がった分家筋の話を聞きながら、晴菜は小さく相槌を打つ。

「こっちの酒蔵はうちとは水が違う。硬度が高くて、ミネラルが多い。だから酒の骨格がしっかりしてる。夏の酒蔵は冬の戦場に向けて体力温存させる時期だ。今年の夏は次の仕込みで双方の銘柄をブレンドする限定酒の企画を立ち上げていてな、今日の視察はそれの打ち合わせも兼ねてる」
「それって、お見合いの時に言ってた『新しい挑戦』のこと?」
「そうだ」
< 69 / 135 >

この作品をシェア

pagetop