君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 隣でハンドルを握る奏汰の声に、どこか誇らしげな響きがあった。仕事の話になると、いつもの強引さが少し影を潜め真剣なそれになる気がした。
 そんな奏汰はスーツではなく、濃紺のポロシャツにチノパンというラフな格好で、どこか抜け感のある色気を漂わせていた。それでも隠しきれない育ちの良さが滲んでいる。
 車はやがて山間の静かな一帯へと入っていった。歴史を感じさせる黒塗りの板塀が続く一角に、どっしりとした大きな建物が現れる。

「着いたぞ」

 車を降りた瞬間、重苦しい熱気が晴菜を包み込んだ。耳をつんざくような蝉時雨に、晴菜は思わず目を細める。

「蔵の中は別世界のように涼しい」
「本当に?」

 重厚な木の扉を開け、一歩中へ足を踏み入れる。二人を迎えたのは、日に焼けた肌に作務衣姿の男だった。三十代半ばだろうか。鋭さと朗らかさを同時に宿した目が、奏汰の顔を見てふっと緩む。
 
「おぉ、奏汰。待っていたぞ」
「久しぶり、(みのる)さん」
 
 奏汰がひらりと手を上げた。稔は奏汰の隣に立つ晴菜にちらりと視線を向け、にやりと口角を上げる。

「……で、そっちの綺麗な方は? 嫁さん?」
「残念、まだだ」

 肩を竦めながら声を返す奏汰は明らかに何かを含んだ笑みを浮かべていて、晴菜の頬に熱が集まる。

「ちょ、ちょっと……!」
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