君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 傲慢で、強引で、すべてを手の内に収めていなければ気が済まない独裁者。そう思っていた。けれど、彼は少しでも息をつけば、家も、酒も、人も守れなくなると知っているのだ。
 代々受け継がれてきたものを失わぬようがむしゃらに走るしか彼の道は残されておらず、重圧を悟られないために、わざと晴菜の前では尊大に振る舞うことで自分を鼓舞してきたのかもしれない。その考えに思い至った瞬間、胸の奥がちくりと痛んだ。
 晴菜は膝の上で握りしめていた指を解き、少しだけ視線を落としてから静かに言葉を紡いだ。

「私……今日ここに来て良かったです」
「あん?」

 予想外の言葉だったのか、奏汰は意外そうに眉を上げた。

「造る人の覚悟を、その熱を……肌で感じることができたから。それを届ける側にいる自分の仕事を……これまで以上に誇らしく思えたから。ありがとうございます」

 晴菜がぽつりと呟くと、奏汰はぴたりと動きを止めた。
 奏汰はゆっくりと俯き、しばらく何も言わなかった。畳に落ちた自分の影を見つめるように顔を伏せている。その沈黙がやけに長く感じられた。
 庭から聞こえる蝉時雨だけが、二人の間の時間を埋めていく。じっと俯いたままの奏汰の横顔は、何を考えているのか読み取れない。
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