君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 ついさっき、蔵の中で見た彼の情熱。彼が背負っているものの重さ。それらを間近で知ったばかりだからこそ、麗奈へ言い返すことは難しく思えた。
 畳の上で硬直する晴菜の手に、奏汰はゆっくりと自身の手を重ねてくる。そうして、憚ることもなく、力強く、それでいて優しく包み込んだ。

「俺の隣に誰が立つかは、家の戦略じゃなく、俺が決める」

 奏汰の抑えた、けれど怒りに震える声が響く。その怒気を含んだ言葉に、麗奈の完璧な笑みが、ほんの一瞬だけ歪んだ。
 歪んだ笑みはすぐに元の形へ戻った。けれど、冷徹な瞳に生まれた微かな苛立ちを麗奈は隠しきれていなかった。

「すぐ感情的になるのは、あなたの昔からの悪い癖ですわね、奏汰」
「……麗奈さんこそ、人を駒のように扱う姿勢は変わっていないんですね。それではいずれ人はついてこなくなります。人はなによりも大切な『財産』だと父は言っていました」

 完璧に整えられていた麗奈の顔に僅かな歪みが浮かんだ。扇子を持つ指先に、はっきりと力が入る。
 奏汰はそれだけを言うと、迷いのない動作で畳から立ち上がった。手を繋がれたままの晴菜も、奏汰に引き上げられるようにその場から立ち上がる。

「嫁ぎ先に貢献したければ、別の方法を探してください。これ以上彼女を侮辱することは、俺が許さない。……行くぞ、晴菜」

 奏汰が晴菜の手を引きながら、立ち尽くす麗奈を視界に入れることすら拒むように堂々と歩き出した。
 麗奈の横を通り過ぎる瞬間、晴菜は肌を刺すような鋭い視線を感じた。不釣合いだ、と、言葉にされずともそう蔑まれているのを感じ、足が竦みそうになる。
 けれど――奏汰の手は強く、迷いなく晴菜を前へと導いていた。
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