君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「……すみません。今日は……少し、考え事をしていて」

 相変わらず、松本は顔を上げない。けれど、その声にはいつもの皮肉よりも、わずかな気遣いが混じっていた。口は悪いが、長年夜の世界で生きているだけあって、スタッフのわずかな動揺を見抜くのが早いのだろう。

「だろうな。早いとこ切り替えとけ。来週、レセプションだろ。あの場でその腕は使い物にならん」
「あ……そ、うですね」

 奏汰に翻弄されすっかり頭から抜け落ちていたが、来週はギャレットにとって重要な日が控えている。
 バーテンダーは勤務する店のカウンターに立つだけが仕事ではない。ホテルや企業主催のレセプションに、助っ人として呼ばれることもある。
 来週のレセプションは、都内有数ホテルの新ラウンジ設立を記念した大規模な祝賀会だ。松本の古い伝手で声が掛かり、ギャレットからは松本と古参スタッフの晴菜、二名で赴くこととなっている。ギャレットの名前を売る、大きなチャンスだ。各界の著名人が集まる華やかな舞台で、失敗は許されない。

「外の現場は気ィ抜けねぇんだ。だから今日はさっさと帰って、頭も舌も立て直せ」
「……はい。ありがとうございます」
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