社畜女の愛され白書〜三十路の社畜OLは出会った翌日に八才年下男子と結婚しました〜
勇凛くんに抱きしめられること数分。

勇凛くんは、暖かくて優しくていい匂いがした。
陽だまりにいるようだ。

「勇凛くん、ありがとう。勇凛くんの本気、ちゃんと受け取ったよ」

無自覚で婚姻届を出してしまい、勇凛くんも不安かもしれない。

「じゃあ、俺とのこと真剣に考えてくれますか?」

優しい声が耳元に響く。

「うん」

勇凛くんの胸の鼓動が早い。

緊張していることがわかる。

この子が本気なのは十分伝わった。

その時、人が通りかかった。

慌てて私たちは離れた。

「勇凛くん、もう帰っていいよ。私は大丈夫だから」

「いえ、面会時間ギリギリまで一緒にいます」

勇凛くんの優しさに胸を打たれる。

こんな素敵な男の子だから、もっと相応しい女の子と一緒にいるべきだと思うんだけど──

確定ではないにしても、結婚してしまった。

勇凛くんはそのつもりでいる。

どうしようこれから……。

まず月曜日にすぐに市役所に行かないと。

悶々と考えながら勇凛くんと病室に戻る。

「退屈じゃないですか?何か本とか買ってきますか?」

「えーと、じゃあ勇凛くんセレクトで」

「わかりました」

無邪気な笑顔。

かわいい……。

勇凛くんが病室を去った後、ベッドに横になって少しだけ目を閉じた。
< 12 / 26 >

この作品をシェア

pagetop