【完結&番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして
業務が終わった後、父が勇凛と彼女を呼び出したのを聞いた。

二人に一体何を話したのか──

聞きたい。

聞いても何も得はない。

ただ、あの二人の未来が知りたかった。

俺が叶えられなかった関係のその先を。

だから待っていた。

二人が来るのを。

ところが出てきたのは彼女だけだった。

「おい」

彼女が驚いて振り返った。

「お疲れ様です」

ちょうど帰ろうとしていた様子だった。

「父と会ったのか?」

「……はい」

「そうか。今から時間をもらっていいか?」

「え?」

「そんなに時間は取らせない、ついて来い」

連れて行ったところは、たまに一人で行くホテルのバー。

ここに女を連れてきたのは初めてだ。

「体調は回復されましたか?」

「……ああ」

本当は、悟られたくない。

俺の本心を。

でもなぜか、この時自分は素直だった。

「社長は俺の事を何か言っていたか?」

彼女が戸惑っている。

「君が何を言っても何の支障もないから安心しろ」

「社長は自分が経営のセンスがなくて、勇輝さんに迷惑をかけたと後悔していました」

──後悔。

何も考えていなかった訳ではなかった。

「そうか」

「あと……社長を退任する意向があるようです……」

意外だった。
そこまで父が考えていたことに。

「大変な時に、とても頑張られてたんですね」

そんな言葉を彼女に言われる情けなさと同時に、もう強がるのも疲れた。

「私も社畜だよ」

事実だ。
彼女が初めて会った時に言った言葉を思い返していた。
俺はボンボンかもしれないが、全て会社に捧げた。
過去を捨てて。

「あの会社の利益のことしか考えこなかった。ずっと」

でも、もうそろそろ解放されたい。
正直限界だ。

***

「タクシーで帰りなさい」

「勇輝さんはどうされるんですか?」

「私はここに泊まる」

「……女の人が来るんですか?」

「あれは取引先で関わった人間が寄ってきて、都合がいいからああしているだけだ」

「そ、そうなんですね……」

「もうそこまでする気もなくなった。今日は一人でゆっくりしたい。それだけだ」

この時、父も、過去の自分も、今の自分も、赦そうと思った。
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