社畜女の愛され白書〜三十路の社畜OLは出会った翌日に八才年下男子と結婚しました〜
案の定、今日も残業。

派遣社員は大して仕事もせずに帰る。

これ以上人件費を出せないからと補充はなし。

上司は私の教え方が悪いと言う。

「もう無理かも……」

スマホで転職サイトを開いた。

その時、メッセージの通知がきた。

勇凛くんからだった。

『お疲れ様です。仕事どうですか?』

はて。

そういえば昨日、また会う約束をしてたような……。

でも、今日も遅い。

また今度にしてもらおう。

『ごめん。今日は無理かも』

するとすぐ返信がきた。

『待ってます。昨日二人で話した場所で』

このままフェードアウトしようと思ったのに、昨日の彼の真剣な顔を思い出すと、できなかった。

──午後10時

やっと仕事が終わって、私は急いで会社を出た。

そして昨日、2人で話した場所に向かった。

大通りの雑居ビルの前。

そこに行くと、勇凛君が立っていた。

「待たせてごめんね」

「いえ、仕事、お疲れ様です」

寒い中、かなり待たせてしまった。

「あの……待たせたお詫びにご飯行かない?」

こんな時間にする提案ではないのは重々承知してるが、思いつくのはそんなことだった。

「はい!」

勇凛くんの爽やかスマイル。
癒される……。
母性本能を刺激してくる。

そのあと、近くにある飲み屋に行った。

少しだけご飯を食べて帰るはずだった。

しかし、一杯だけなら──

私は気が緩んだ。

───

鳥の囀りが聞こえる。

朝か。

ゆっくり起き上がると──

全然知らない場所にいた。

「なに、ここ……」

ワンルームの部屋。
シンプルな家具。

私は黒いシーツのベッドで寝ていたようだった。

寝息が聞こえる。

ふと床を見ると──

勇凛君が寝ていた。

「え!!!」

思わず叫んでしまった。
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