ガラスの告白
 眉を下げ軽く息を着いた時、背後に立つ電信柱に積もった雪が、ドサッと音をたて落ちてきました。
 時男はその音に驚き、固まるように身体をびくつかせます。


 聴こえた方に視線を向け探しましたが、崩れ落ちた雪あとを見つけることは出来ずにいます。
 何処かイタズラに、かくれんぼをするように息を潜めていました。


 明るい日差しは、真っ白な雪をキラキラと輝かせています。
 強調した光が時男の瞳に飛び込むと、心に残る小さな記憶を膨らませて行くのでした。
 それは一ヶ月前のこと。


 休み時間を利用し、職員室に就職面接の際に必要な書類を、受け取りに出向いた時のことです。
 男性担任の村上から、職業安定所からの紹介書と、本校の生徒で有る証明書類を受け取ります。

 村上からは「当日忘れるなよ」と一言。彼はすぐさま、次の仕事に取り掛かるかのように、机の上に置かれた書類整理に勤しんでいました。

 職員室を見渡すと、休み時間にもかかわらず、次の授業の準備をする教員もいれば、湯呑を持ち、お茶を啜りながら会話をする教員もいました。


 時男はその中を抜け、何も感じず、何も考えることなく退室しようと歩き出します。
 教員らの並ぶ机を抜け、職員室の端まで行くと、出入り口に向け曲がろうとした時の事でした。
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