ガラスの告白
 うすぼけながら思い出す記憶の中には、幸せそうに共に暮らす母親と三人が、描かれています。
 夕焼けに染まり手を繋ぎ家路を歩いた記憶や、夏夜の自宅前でおこなった、線香花火の記憶など。


 それは春に咲く花を見つけ心安らぐときでも、寒い夜風に吹かれ物悲しくなったときでも、突如おとづれる記憶でもありました。
 それだけに、後から知った再婚相手の存在は、気持ちの悪い者でしかありません。


 母親の心配同様、自分達の居場所を突き止め、何食わぬ顔で再び目の前に現れるのではないのかと、安易に恐怖を実らせてしまいます。

 もう二度と顔を合わせたくない。欲を言えば亡くなっていて欲しいなどと、悪魔の気持ちさえも生まれてしまいます。
 もしその事自体、周りの人に知れ渡ってしまったら、どうなってしまうのだろう。


 娯楽のように面白がり騒ぎ立てるだろうか。中には汚いものを見るように、近づくことさえも、拒絶されるのでは無いだろうか。
 安易にそんな連想をしてしまい、恐怖を覚えていました。


 手を入れるポケット内では、爪先で痛くなるほど、強くこぶしを握りしめてしまいます。
 その痛みに我にかえり、冷静になっていました。

(辞めよう。余計な心配は)

 思春期の心の乱れが、時男の心に自己否定な気持ちを与えていました。
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