ガラスの告白
 時男は教室に向かう少女を追いかけながらも、母親を心配し振り返っていました。
 離れ見る母親達の輪のなかに、渡辺の母親も歩み寄って来ています。
 その光景を気にし、足取りがゆっくりと、立ち止まります。

 等の渡辺を探し視線を向けますと、友人グループ達やサッカー部員などと、代わる代わる写真を撮っていました。

 きっとこの後は友人同士で、食事などに出かけるのであろう。渡辺の母親も、息子の卒業式を確認し、せっかく学校まで足を運んだので、雑談などがしたかったのではないかと考えていました。

 笑顔で、挨拶を交わしている仕草がわかると、時男は安心して、教室に向かうことができていました。
 時男は遅れまいと前で立ち止まり見守る、少女のもとに、駆け寄って行きました。
 
 教室に着くと、蛍光灯の灯りを点ける事なく、室内に入っていきます。
 どんよりした昼間の明かりは、古く曇った窓ガラスを通しクリーム色の世界を作り上げていました。

 黒板には、誰かが描いた三年A組卒業と、大きな文字で書かれています。
 色とりどりのチョークを使い、派手に色鮮やかなものであり、周りには寄せ書きのように、クラスメート各自の思い思いの言葉が書かれています。

 ありがとう、などの感謝の言葉や、これから何の職業に付き、どのような生活を送るかなどの、夢を綴ったものも描かれていました。
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