ガラスの告白
 少女は嬉しそうに、黒板に書かれた文字をゆっくり眺めていました。
 時男は教室内の机や、教壇から正反対に位置する壁を見つめます。

 今朝まで貼られていた、手書きで書かれた掃除登板表や整理整頓などの張り紙は、卒業式の間に片付けられていました。その下に設置された、マス目状の小さな物入れにも何もなく、次にこの教室で学ぶ生徒を迎える準備に、物悲しく思えまていました。 

 時に何もなさそうな教室や、自身の使っていた机の中を確認しない様子に、黒板に見入る少女の背中を見つめ呟くように話しかます。

「忘れ持って」

 少女は振り返ると、目線を逸らし恥ずかしそうに話します。

「萩原君にまだ秘密にしていたことがあるの。それを伝えるには、この教室がかっこいいかなっと思って。でも、まずはお礼を言わせて」

 少女はかしこまり、続けます。

「ありがとう。友達になってくれて。私嬉しかったんだ。授業でのドッチボールの時も、保健室に私を探しにきてくれた時も。卒業まじかの数週間。その間に友達ができるとは思わなかったから」

 時男が恥ずかしくなりながら相槌を打つと、少女は一泊あけました。

「それにそのコート」
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