ガラスの告白
 時男は自身の着ている上着を見て、これに何があるのか聞き返します。

「コート?」

「一緒に卒業したいって言ってくれたじゃない。私、羨ましいっと思ったの。私も高校生活をわずかでも経験して卒業を迎えたかったから、そのコートは三年間の高校生活と、卒業を一緒に過ごすことができて幸せだなっ、て」

 時男は恥ずかしさのあまり、軽く首を振り誤魔化していました。
 喜びを受け止めなだらも、そんな些細なことに幸せを見つけられる。そんな少女は純粋な心を持った人物だと感じました。

「保健室の先生も褒めていたよ。同じものを大切に使い続けることが出来る人って深い愛着を育むことができる心が豊かな人なんだって、彼みたいな人が、人との信頼関係を大事にするって」

 その言葉に、保健室での出来事を思い出していました。教員から耳元で囁かれた内容が、このことではないかと状況を当てはめたのでした。

「そういえば、午後の授業。卒業式の練習を抜け出して鼻顔稲荷に行ったじゃない。あの時、そんなことを言われたんだね」

 少女は、時男の言葉足らない説明に、言っている意味がわかりませんでした。顔に笑みを含ませ首を軽く傾けました。
 時男も少女のおどける表情につられ笑い、もう一度言葉を整理し、質問します。
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