ガラスの告白
 彼女の問いかけに、時男は首を軽くふり答えました。

「僕には充分あったかいよ」
(君がもしガラスであっても、君の心の温もりは、僕には十分温かいんだ)

 誰もいない教室で二人は、小さく指先だけで通じていました。
 時男はその温もりを、とても大事に感じ取ります。

 要とのバスの中の出来事も、何も考えられず行わなかったことを、今では良かったと安心していました。
 もしあの時、欲望のまま口づけを行っていたら、こんなに純粋な気持ちで触れることはできなかったと、心を温かくしていました。少女の横顔を見て改めて思います。

 可愛い。綺麗だ。うつくしい。

 全ての言葉が、少女を表現するのに当てはまると、心を弾ませました。
 初恋や小さな恋心などの経験が思い出せないほど、今のこの気持ちは強まり、過去のどんな出来事も薄れてしまいます。

 時男は今改めて、少女に心を奪われていることに、気づいたのでした。
 時男はこれからも少女の側で、いくつもの、思い出を作り上げていきたいと思いました。

「ねえ、卒業してから。次はいつ会えるかな。来月になれば神社の桜も咲くと思うし」

 時男の問いかけに、少女は答えることを躊躇していました。
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