ガラスの告白
 少女はペンを止めると、何か考えるように耳元の髪をかき上げていました。
 その仕草に、見惚れると、時男の気持ちが暖かいものになっていました。

(大丈夫。きっと些細な理由があってのことだろう)

 先ほどの不安を消え去すように、少女に対し一方的な安心を抱かせると、時男は職員室を後にしていたのでした。


 しばらくすると、雪を押し潰す音をたて、一台の軽自動車が近づいて来ました。
 路面バスとは違う排気音と姿形にがっかりしながら、気まずさを避けるため運転手と目を会わせ無いよう意識しました。


 バス停に設置された、錆びつく鉄板の時刻表へと視線を空します。
 軽自動車は通り過ぎることはなく、時男の目の前に止まると、ドアのガラス窓が下がりました。
 視界にすぐに入った助手席の人物は、クラスメートの渡辺秀治(ワタナベシュウジ)でした。


 彼は無理に男らしさを演じているかのように、装った言葉の挨拶をかけました。

「……オッスッ」緊張した、辿々しい物でした。

 時男も普段使わない言葉で、装った挨拶を返しました。

「おっ……すっ」

 向こう側の運転席からは、頭を低くし覗き込む形で、彼の母親が声をかけてきました。

「時男くん。おはよう」
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