ガラスの告白
 時間だけが過ぎる中、噂では卒業後の少女は、神奈川県に就職したと聞きます。
 その話を教えてくれたのは、五年後に帰省した、渡辺からの話でした。

 親族以外、友人に顔を合わすのは、時男だけだと聞いています。
 少女と出かけた鼻顔稲荷神社の柵にもたれかけ、その内容を聞いていました。

 風の噂のように耳に入ったと教えてくれていましたが、人望の厚い渡辺だからこそだと、時男は考え見つめます。

 灰色の作業着姿の自身とは対照的に、渡辺は白いファーのついたダウンジャケットと、足に張り付くようなパンツズボンを上品に着こなしていました。

 学生時代の印象からかけ離れたその姿を、時男は眩しく見つめます。

 久しぶりに会い会話の中、上品にキラキラ輝く渡辺が映りながらも、時男は学生時代にいじめられなかったのは、彼のおかげだと考えていました。大人になり感謝の言葉も、恥ずかしげもなく告げることができていました。

「ありがとうね秀ちゃん。小中高と、それに今もこうして僕に声をかけ会いに来くれて」

 渡辺に学生時代の話を持ちかけたとたん、柔らかな表情は徐々に緊張へと変わりました。常に気に留めていたかのように、中学時代からの気まずくなった原因を謝っていました。

「とっくん。覚えているでしょ。廊下で、あの時が原因でお互いが会話しずらくなったこと」

 渡辺の見せる申し訳ないとっ、辛そうな表情に、時男はやるせ無い気持ちになりました。
< 120 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop