ガラスの告白
 それだけに卒業間近のこの時期に、昔のように呼ばれたことは、現在も久しい友人であり、今までの距離感を訂正している様でした。
 言葉の最後で目線が向けられると、時男は心が軽く広がるような気持ちになっていました。

 母子家庭の貧乏ぐらし、何か理由が有り引っ越してきたことを、他の誰かと話したこともあったのだろうと考えます。


 だからあの廊下での眼差しも、そんな噂が彼の耳に入り、時男を見つめた目や表情は、悲しむように憐れむようなものに変わってしまったんだろうと。
 だが、それでも関係ない、今の自分には気にならないと、表現してくれているようでもありました。

 嬉しさが込み上げると、今度はっと、会話の内容よりも小学生時代のように、彼をあだ名で呼ぼうっと意識しました。

「……秀ちゃんは、向こうで一人暮らし……なの?」

「うん……学生寮」

 渡辺は短い言葉を返すと、振り返る事なく冷静さを保つように沈黙します。
 彼も認識してくれただろうと、時男は嬉しくも寂しくも感じていました。
 渡辺は次第に状況が照れくさく感じた様子で、気取ることのない力の抜けた表情で振り返りました。

「秀ちゃんってそう呼ぶの、今では要と、とっ君の二人だけだね、何だか照れ臭い気分だよ」
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