ガラスの告白
 渡辺はよっぽど恥ずかしかったのか、顔を赤く染め上げています。
 異性を意識し大人びる容姿ではありましたが、目尻口元を歪めた優しい表情に、昔遊んだ懐かしさを感じていました。


 教壇の反対側、後方扉から教室に入ると、渡辺は数人の友人から声をかけられ時男から離れて行きます。
 渡辺と男子生徒は、冗談の一言二言を話しているようで、会話の後お互いが軽く笑い合っています。
 女生徒は、席の前を通過する渡辺を待つように目線を配り、挨拶の言葉をかけていました。


 そんな人気者であり、羨ましく感じる後ろ姿が視界に入っても、時男の心情はいつもより晴れやかなものでありました。
 優しいままだ。要だって、学校内で会えばあちらから声をかけてくれる。
 二人は何も変わらない。昔から知る友人のままだと、心を弾ませていました。


 一番前の席に向かう渡辺とは違い、一番後ろの真ん中が、時男の席です。
 時男はコートを脱ぐと、椅子に被せるように引っ掛けます。
 席に座り周りを見渡すと、大学受験や就職活動で出かける者が多々いる為、通学している生徒の人数は少ないものになっていました。


 中には卒業間近だと羽を外し、遊び休む者もいる始末です。
 三十人ほどのクラス生徒は、十五人ほどの半分の人数になっていました。
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