ガラスの告白
 内野から外野へ、外野から左右の外野へ、ボールは逃げる者を惑わせるように行き交うと、時男は不安な気持ちで目で追っていました。
 心配して気にかけたのは、ガラスの少女の存在でした。


 クラスメートに混ざり、ボールから逃げる少女の表情が困惑にも映ると、時男の心に突き刺さります。
 比較的、軽く柔らかいゴムボールを使っていましたが、心配はそんな物では打ち消すことにはありませんでした。
 何かの衝撃で、少女が割れてしまわないか、気にかけていたのでした。


 ふざけ合うようにボールを投げ惑わすクラスメートが見えますと、誰の目にもガラスに映っていないと、気づきます。

(どちらなのだろう。彼女はガラスなのか、ガラスに見えているだけなのか)

 目で少女を追わ無いよう意識もしましたが、時男の心の中は、気が気ではありませんでした。
 ボールは別チームの渡辺の元にわたっていました。近くには離れそびれた女生徒もいます。
 渡辺は何度かボールを投げる素振りを見せ、お互いが戯れ合うように笑っていました。


 最後には女生徒が疲れ立ち止まると、押すように両手で軽く投げ当て、ボールはその場に残っていました。


 別の女生徒がボールを拾い上げると、時男は手を挙げ声を発っしまいます。
「パスッ」
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