ガラスの告白
 いつになく尊重をする時男に、みんなの注目が集まっていました。
 普段ボソボソと話す彼に不釣り合いな、歯切れ良い言葉でした。
 あっけに取られた女生徒は、言われるがままボールを投げ渡します。


 時男はボールを軽く手のひらで受け止めると、すぐ様下投げで、相手コートの生徒の足に当てっていました。
 軽々素早い動作に、クラスメートの大半は、時男の印象から、かけ離れていると感じました。
 幼い頃から知る渡辺だけが、他の生徒とは違い、懐かしむような視線を送ります。


 ボールはすぐに時男に向け投げ込まれましたが、それは少し体から離れ位置するものでした。
 避けなくても体に当たることはありませんでしたが、時男は手を伸ばし、バランスを崩しながらも受け止めていました。

 皆が注目する中、それ以上ボールを相手にぶつけることはありませんでした。

(お互いがムキになれば、自ずと投げるボールに力が入ってしまうかもしれない)

 いずれガラスの少女にもボールが当たり、傷付けてしまうと恐れていたのでした。
 時男は少女の盾になり、数十分のこのゲームを、やり過ごそうと考えていたのです。


 手にしたボールは、優しく放物線を描くように味方外野に投げ渡していました。
 ゲームが進むにつれ、時折ガラスの少女に向けボールが投げれることもあります。
< 30 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop