ガラスの告白
 時男は手で鼻をおさえながら、もう片方の手のひらを見せるように上げ、大丈夫だと意思表示をします。
 体育教師の佐藤は緊迫した表情でかけ寄り、怪我の具合を見ていました。
 両手で時男の頬を持ち、角度を変えるように状況を確認します。

「これ痛いか」

 軽く鼻をつまみ触れると、骨が折れていないか確認していました。

「いえ、大丈夫です」と時男は答えました。

 たれた血が大袈裟に体操服を汚します。佐藤は鼻をつまむよう指示しながら、保健室に向かうようにと周りを見渡しました。

「おい、保健委員。着いていってやってくれ」

 小さなざわめきの中から、今日休んでる。っと、呟くような声が聞こえますと、その声に改めて、クラスメートが言い直していました。

「保健委員は今日休みです」

「そうかっ。じゃあ」

 体育教師の佐藤はクラス委員長を探し、彼、彼女らも休みであることを悟り、誰が適任か考えていました。

「私が着いていきます」

 ガラスの少女が胸元まで手をあげると、沈黙がおとづれました。
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