ガラスの告白
 引き戸を開き室内を覗き込むと、カーテン越しの窓からの薄明かりが、蛍光灯の光を打ち消し、室内をぼやかしていました。

 そこにいた年配で小柄な女性教員は、おとづれた二人を見るなり、目元が不安げなものに変わっていました。

「どうしたの? 何かあったの』

 向けられた言葉の先は少女であり、立ち上がり近づくと、手を取って体全体を目で探っていました。
 少女は申し訳なさそうに「いえ、私ではなく。あの……体育の授業で」と答え、教員はその言葉に我に帰り、心配事が少女でないことに、息をつくように安心した表情に変わりました。

 保健職員は(確か貴方は)と、思い出すように時男に声をかけていました。

「三年A組の?」

「はい。萩原です」

「どうしたの。鼻血?」

「はい。ボールがぶつかってしまい。とうに止血しているのですが」

「そう。念の為、そこの長椅子に仰向けで寝てなさい」

 教員は淡々と指示を出しながら背中を向けると、棚の扉から小さく折り畳まれたガーゼと、消毒液の準備をしています。
 時男は横になりまぶたを閉じました。

 鼻血で汚れた顔を拭くための、ヒヤリと冷たいガーゼの感触を受けながら、 小声で話す、教員と少女との会話も聞こえていました。

「今日から教室で勉強でしょ」
< 37 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop