ガラスの告白
 翌日。時男は目を覚ましますと、ガサガサッとっ、ゴミ袋を持ち上げる音の後に、母親がそれを外に捨てに向かう、玄関扉の閉める音が聞こえました。

 部屋のすぐ隣の台所では、小さな曇りガラス窓に明るい日差しが見えます。
 目覚まし時計は、後わずかでベルを鳴らします。時男は起き上がり、それを止めました。
 布団をたたみむため立ち上がると、目に付いたのは、壁の衣紋掛けに吊るされたコートです。


 昨日気づいた、切れていたボタン止めは、縫い付け治されてあります。
 昨晩時男が寝ている間、針を入れてくれたようで、感謝と喜びの気持ちでいます。

(母さん、早速直してくれたんだ)

 紐をそのまま縫い付けますと寸足らずになるため、新たな紐とそれを縫い抑える適当な生地で手直しされています。
 色味はその部分だけ若干違いましたが、切れ垂れ下がった、だらしなさは消え去っていました。
 これなら大丈夫だと、頭の中にすぐに浮かんだ、ガラスの少女のことを考え、自分の容姿を気にしました。

(名前ぐらい覚えないと、ひょっとしたまた、話す機会もあることだろうし)

 顔を洗うため洗面所に向かいます。
 少し汚れくもる鏡に自分を映すと、なぜ自分にだけガラスの姿に見えるのか疑問がります。
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