ガラスの告白
「午後から三年生は、卒業式の練習でしょ。さあ二人とも、そろそろ体育館に行かなきゃ」

 急かす言葉をかけられましたが、少女は沈黙のまま教員を見つめ、動こうとはしませんでした。
 体育館に出向き、説明や練習をするよりも、このままこの場に居たいと、態度を示しているようです。
 時男はそんな姿を見て、清楚な印象しかなかった少女に対し、このような子供ぽっい一面あるのかと、可笑しくもなりました。

(そうだよな、当たり前か。彼女のことは、なにも知らないのだから。転校して来た彼女からしてみても、自分はただのこの町の住民ってだけだ)

 何も知らない者同士、今後は友達として自然に会話できるのではないかと、考えていました。
 時男は少女にも会え安心すると、このまま一人、体育館に向かおうとします。
 退出しようと、少女にもう一度視線を向けると、気付く様に口を開き、教員に話しかけていました。

「卒業式の練習なら、授業の単位とは関係はないですよね」

 冷静な言葉遣いは、正論だと主張するように聞こえていました。
 保健教員は、そうだけど、っと言わんばかりに眉を下し、ため息を着くように返します。

「でもこれも、学生時代の思い出になるわよ」

「思い出っ……ですか?」

「そうよ。学校生活は何も勉強だけの場ではないのよ。予行練習だって、卒業式当日に慌てることなく進められるし、ほんの些細なことが後々いい経験になったと、思い語る場面も出てくるわよ」
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