ガラスの告白
 後から廊下に出て扉を閉めると、少女は無言でゆっくり数歩、歩き出す動作が、背中で感じ取れていました。
 意識しながらも追い付こうとする時男に少女は振り帰ると、恐縮するように、ある質問を投げかけていました。

「萩原くん。ちょっと待って。こんなこと聞くの変だけど、萩原くんって良い人?」

 確かに変な質問だと感じていました。それもどのように答えて良いのかと、迷ってしまいます。

「良い人ではないけど、特別悪い人でもないと思う」

 そう時男がそう答えると、少女は少し考えたあと、あるお願いをしていました。

「私に、協力してくれる?」

 投げられた言葉に、時男は戸惑いながらも、先ほどより少し大きな声で聴き直していました。

「協力って、何を」 

 少女は自身の口元に人差し指を重ね、声を抑えるようにと、表現します。保健室に声が届かないか気にしながら、体を傾け、時男の肩越しから視線を出入り口に向けているようでした。

 静まり反応のない保健室の扉に安心したようで、少女は小声でそのことを伝えます。

「思い出。思い出を作るの。授業をサボって……このまま学校を抜け出そうよ」

 思い出を作る。普段からその様に考えていたのか、先程の保健教員の発言が強調した形で、残っていたのか、声を走らせる様に話します。
 学校を抜け出し遊びに行く。このような悪戯心を持つ人物なのだと、時男は思いました。
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