ガラスの告白
 楽しみのように語る少女に対し、時男はごく平然と答えます。

「どうだろう。この辺の桜は、咲くのが遅いから」

 少女は顔を下げ微笑み、「そうか」っと、納得するように呟やきます。

「どうしたの。何かあるの?」

 時男の質問に気がつくように、顔をあげました。

「ううん。なんにもないよ」

「また内緒?」

 少女は、そうねっと、うなずき、にっこりします。
 草木の揺らし通る風は、徐々に冷たいものに代わると、二人は自然に衣服の首元を閉めていました。
 気がつくと、日差しは夕明かりが混じる杏子色へと変わっていました。


 少女には気にかけてたことがあるようで、ときおり視線をくばり、話すタイミングを測っています。
 時男がそろそろ帰ろうかと、ゆっくり手すりから手を離し身体を向けると、少女はその言葉を口に出していました。

「萩原くん。どうして体育の授業で、私をかばうようにしてくれたの」

 準備していた突然の質問に時男は、それはっと、声に出そうになりましたが、理由は言えないと戸惑っていました。
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