ガラスの告白
 ごく自然にうつる仕草に、見惚れてしまいます。
 変なのは自分の目や頭、感情なんだと。それでいいと願います。
 少女は改めて、時男の方に体を向け話します。

「そうだ、萩原くん。私の秘密。教えてあげる」

 時男は息を呑みました。
 いま考えたこと。ガラスの姿だと考えたことを、心の中を見透かされていると思いました。
 真っ直ぐ向き合い、時男の緊張は強張り、少女にも緊張が伝わっているようでした。

「私の名前は川上(カワカミ)……取り敢えず今はここまでかな」

 冗談ぽくはなす言葉に、少し困惑を覚えましたが、意味がわかり、自身にも呆れた表情に変わります。
 少女は笑いが混じる声で話しました。

「今度は覚えてよね」

「うん。ごめん。覚えるよ」

 夕日の光に色づく少女の姿は、杏子色から、とても赤い林檎の果実のように、輝きみせていました。
 微笑みを向ける少女は、先ほどの時男の言葉を、奪い取るように自慢げに話します。

「そろそろ帰ろうか。今度は下の名前を教えてあげる。それまで誰にも聞いちゃだめだよ」

「何で勿体ぶるの?」

 意地悪だと声を出しながらも、時男は喜びました。 
 少女の表情も優しく微笑み映り、時男との帰りを恥ずかしそうに意識して見せます。

 高校生活の最後に、心の許せる友人ができたと、時男は心を弾ませるのでした。
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