ガラスの告白
 自宅から一キロほど離れたバス停への道乗りでは、雪はすでに、何台か通った車のタイヤ跡で押し潰され固まっていました。
 同じ場所を繰り返し踏んでしまうので、凹凸をつけた地面は、歩き進むことを困難にさせています。


 足を滑らせないよう慎重に踏み締め、バランスをとるように歩幅を縮め歩きます。
 たまに後から現れる車の車体が日差しを反射させますと、まるで光輝く別世界から飛び出してきたかのような、錯覚を観せていました。


 時男はそれを見つめ、道路はじに積まれた雪溜まりに足を踏み入れました。
 軽く積もる柔らかい雪は、長靴のふくらはぎまで沈み、少し後悔させています。


 タイヤに巻いたチェーンの音をチャリチャリと鳴らし通過する軽トラックを眺めますと、心境により目に映る物がこうも違うものかと、納得をしていました。


 バス停に着き路線バスを待つ間、腕時計で時刻を確認します。
 到着時間より五分早く着いた事に、安心をしていました。


 待ち時間の間、玄関先での母との会話を思い出していました。

 衣服を気にし、少しでも息子のために幸福な気持ちにさせようとする母の言葉に、実の父親が今も存在していたら、現在の暮らしも違っていただろうと考えてもいました。
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