ガラスの告白
 残り少ない高校生活の中、一度だけ少女の自宅近くまで、送っていくこともありました。
 バスも自転車も使うことのない帰宅道は、二人の足取りを遅くさせています。

 少女のはつらつとした会話に対し、時男は微笑み聞きいるように、「うん」「そうだね」などの小さく短く返しています。

 少女を見守るように、時男は沈黙が多くなっていました。
 田園の先、山の麓(ふもと)に、木造の古い建家と、作業着を着古した老人男性が一人 見えます。

 何も少女から語られることはありませんでしたが、そこが少女の暮らす住まいであると、時男にはわかりました。
 二人は暗黙の了解のように歩み近づくことなく、数十メートル手前で足を止めています。


 その建家の周りには、木材や空き瓶、使用できないと思われる自転車が一台。置かれていました。
 時男は、これ以上の私生活を見せたくないのだろうっと肌で感じると、別れの言葉をかけます。

「じゃあ。ここで」

「ありがとう。送ってくれて……ここで」

 建屋の前に立つ老人は、二人に気付き、遠巻きにこちらを見て立ち尽くしていました。
 少女は見られていることを恥ずかしそうに、時男にも老人男性にも、まともに顔を向けることはできないでいました。
 少女は手を、わからぬほどの低さで老人に向けると、男性が誰なのか説明をしています。

「私のおじいちゃん」
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