ガラスの告白
 バスに乗り込むと顔を上げることなく、木板の床を診て確認しています。
 誰も乗っていないんだと安心すると、やっとここで顔を上げ車内を見渡していました。
 白い車内灯はすでに灯していましたが、差し込む夕日に消されています。

 その場所の暖かい空気に、先ほどまで感じた冷たい風は、夜が近づいた空から吹いたものだと納得していました。

 ルームミラー越しに、運転手さんが時男を確認すると「発車しますと」と声とともにバスが勢い良く走り出します。時男はふらつきながらも、すぐ近くの手すりをつかみました。


 道を走る車は、このバス以外みかけることはなく、ディーゼルエンジンの唸る音は、静けさの空に混じり消され、ゴトゴト揺れ走ります。
 時男は入り口から対面に位置する座席に、腰を下ろしました。

 窓側に背を向けるロングシートは、左右を向くことで、前方と後方を交互に見ることができます。 

 今きた道を振り向き眺めると、赤く燃えるのを閉ざすように浮かぶ黒い雲が、現れていました。
 座りゆられながら時男は、今日あった出来事、少女のことを。この様に考えていました。

 老父婦が、昔から住まれていると思われる建屋、そこに少女が移り住んで来たのだろうと。
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