ガラスの告白
 要は色味の違うボタンかけの紐を見つめると、目を細め語りました。

「すでに直しているんだね」

「うん。……そうだね……」(卒業まで着続けたい)言いかけた言葉に時男の頭の中では、保健室での少女との時間を思い出していました。

 卒業まじかに得た小さな出来事が、今では二人の大事な思い出に思えています。
 同じような会話を、違う女性とすることは、少女に対し失礼だと言葉を止めていました。

 乱れた紐にそっと手を添えるように直すと、時男の表情は温かみのあるものへと変わりました。
 要は、不安の残る眼差しで時男の表情を確認すると、その微笑みを見逃すことはありませんでした。

 苛立ちが込み上げたのか、その感情がぶつかり合ったのか、先程より冷静に、時男に当てつけのようにつぶやきます。

「最近、転校生とよくいるんだね」

 時男は、突き刺すような言葉遣いでガラスの少女のことを問われ、息を飲みました。

「 今日も一緒だったの」と続けた言葉に、学校の停留所ではないその向こうから、バスに乗っている意味をもうすでにわかっている様子です。

「うっうん。話し込んでいいたら、家の近くまで歩いてしまったんだ。ほら、彼女、引越して間もないから、この辺を案内して……」

 要は時男の説明を聞きいる事なく、手袋をなぜ広げる仕草を見せながら、言葉が終わるのを待っています。
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