ガラスの告白
 自宅から最寄りの停留所で降りますと、バス車内に残された要は、時男を目で追うことはありませんでした。

 進行方向だけを見つめ、そのおもむきは反射する窓の光で、映し出すことはありませんでした。

 走り出したバスのエンジン音を背に、時男は家に向かいます。
 夕日はすでに落ち、周りは青黒い夜空に変わっていました。

 感覚を開けた電信柱に、ぼんやり灯る白熱電球の光は、辿り着くまで時男を明るく照らすことはありませんでした。

 暗く視界が悪い中、虚しい思いを要と経験してしまったと、気持ちを落ち込ませます。
 要の気持ちも、わかるようでした。

 それは時男自身も、中学生に上がったぐらいから異性に対し、興味を持ち苦しめたからです。
 その興味は本来ごく当たり前のことで、美しいものでありますが、時男には不純で拒絶した物に感じたのでした。

 過去に再婚相手にされていたことを嫌い否定してきましたが、青年と成り生理現象は止めることが出来なくなると、忌み嫌う性(さが)を持つ自分に、汚いものだと感じていたのでした。

 今も時男はガラスの少女に対し、そのような気持ちではないと、自分に言い聞かせます。
 でもあの時から。ピアノで触れ合った時から、異性を感じてしまったと誤魔化し切れなくなっていました。
 
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