ガラスの告白
 生徒達は先ほどの少女のことなど気にすることなく、村上の行動に気づいていませんでした。
 その光景はクラスの中でただ一人、時男だけが見つめていたのでした。

(少女に何があったのだろうか?)

 自身が恐れるように、少女からしたら絶望的なことが訪れたのかもしれない。
 生徒達の活気ある声の中、おもむろに立ち上がりますと、校庭側に位置する教室の窓側に足を運んでいました。

 三十センチほどの木枠でくぎられたガラスを、十二枚並べまとめた古い作りの窓は、老朽化で現在は開けられることはありませんでした。

 過去に壊れ修復した痕跡があるため、素材の違う曇りガラスも使用されている箇所もあります。
 時男はその中でも、唯一透き通り見える中央部分から、見下ろす形で校庭を眺めていました。
 しばらくすると、ゆっくりと校舎から歩きでる、大人の女性が目につきました。


 二、三歩あゆみでた辺りで、女性は校舎入り口を見つめ、後から現れる誰かを待っています。
 三十センチほどの枠組みの中で、現れたその光景は、活動写真のように背後の明るい話し声とは別次元の様に映ります。


 後から遅れて出てきた少女の姿が見えましても、時男は冷静に、慌てることなくその姿を見守っていました。
 少女は、うつむき肩を落とし、ハンカチで目元を押さえています。
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