ガラスの告白
 マフラーを丁寧に持ち上げ返した少女は、手でスカートを整えながら、石壁に腰を下ろし時男のことを見つめました。

「萩原くんて優しいよね、時々紳士的な行動もしてくれるし」

 時男は瞳だけがガラスとして残る少女を見つめ、わずかながら笑みが戻ったと感じ、隣に腰を下ろします。そんな少女からは、元気を装った言葉が聞こえました。

「早退したから、気にして来てくれたんでしょ」

 時男はそうだと、頷きました。

「ひょっとして、お母さんと帰っているとこ見かけたとか」

 今度は先ほどより、小さく頷きました。

「参っちゃったな。一番見られたくない場面なのに」

 少女は自身の手を合わせ、指を絡ませると、その手を裏返すように前に伸ばしていました。
 一息つくと、しょうがない。大したことではないと、笑顔を作り話しました。

「お母さんはね、私が小学校の時に家を飛び出しちゃったの、今頃になって学校に迎えにきてくれたんだけど。何も学校に来ることないのにっ、子供にだって周りにどう見られているか気にするし、心の準備もあるのにね」


 少女の言葉は内容が違えど、時男には共感しかありませんでした。
 時男は少女の言葉を自身に置き換え想像すると、意識し止めていた胸元を触る癖を、無意識のまま行っていました。
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