だからアナタに殺されたい。
月明かりでさえ吸い込む漆黒の髪がサラサラと揺れている。
その隙間から見える紫の瞳が、私の視線を絡め取り、離さない。
…かっこいい。
こんな時でも彼は私の心を捉え、虜にした。
そして数秒して、私はハッとした。
ーーーもう、誤魔化せない。
「怖がらないで、エレノア」
「い、いや…っ」
ローゼルから逃げなければならないのだが、右手を掴まれてしまっている為、それが叶わない。
このままでは法律に則り、帝国騎士団の騎士としてローゼルは私を捕えるだろう。
禁断症状に陥った吸血鬼は危険である為、最悪殺される可能性さえもある。
「俺はアナタの味方ですから」
「や、ち、違うっ!」
宥めるようなローゼルの優しい声に、胸が痛くなる。
彼が私の味方であるわけがない。
騎士として仕事を果たす為にそう言っているに過ぎない。
喉が、渇くの。
ああ、早く、ローゼルの血を口いっぱいに含んで、喉に流し入れたい。
一滴も残さず、飲み干したい。
もう、思考が、上手くできない。
自分に残された最悪の未来への恐怖と、自分が自分ではなくなっていく恐怖がぐちゃぐちゃに混じって、私をゆっくり壊していく。
涙が溢れて、止まらない。