だからアナタに殺されたい。



おそるおそるローゼルの腕に手を伸ばし、両手で包む。
それからその傷に唇をそっと当て、舌を動かしてみた。



「…っ!」



感じたことのない甘い電流が体を駆け巡る。
口に広がる血は何故か甘く感じて、美味しい。
舐めるたびに私の中に流れ込む血が私を壊していく。

体中を巡るこの快楽はなんだろう。



「ん…はぁ、ん」



気がつけば、私は甘い吐息を漏らしながら、夢中でローゼルの手の甲に舌を這わせていた。

もっと…、もっと…、もっと…!

歯を立てて、噛んでしまいたい…という衝動に駆られたところで、私はハッとした。

私はローゼルを殺したくない。
このまま欲望に任せて血を飲むということは、ローゼルを殺すことに繋がる。

血を飲んだからなのか、どんどん症状が落ち着いていく。

熱が冷めていく頭に、私は耐え難い胸の痛みを感じた。

私はバケモノになってしまった。
それも一番見られたくなかった人の前で。

ゆっくりとローゼルの手の甲から顔を離す。
やっと見えたローゼルの表情は、私を嫌悪することなく、優しく、そして何より嬉しそうだった。
ローゼルの頬はほんのり赤く、喜びで満ちている。



「あぁ、エレノア、かわいい。俺が死ぬまで飲んでよかったんですよ?」



うっとりと微笑むローゼルに、私はまた泣いてしまった。
逃げたいけれど、逃げられない。
どうすればいいのかわからない。


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