だからアナタに殺されたい。
しかしそう自覚したと同時に、複雑な思いを抱いた。
以前までは、彼女の親切がただただ心地よかった。
だが、誰にでも平等な彼女だからこそ、俺にも優しいのだと思うと、やるせない気持ちになった。
心が少しずつ軋む、そんな感覚だった。
エレノアは俺の全てを変えてくれた。
強さには、周りの評価も仲間も不要だ。
ただ己の力を磨き続け、必要な場面で力を発揮し、報酬を得る。
それだけで十分生きていけたはずなのに、エレノアが俺よりも俺のことで泣いたり、怒ったりするものだから、気づいた時には、そんなエレノアに影響された人たちが俺の周りにはたくさん集まっていた。
第二騎士団の同僚に、先輩に、隊長や副隊長。
彼らは温かく俺を迎え入れ、まるで家族のように接してきた。
初めて親以外から受けるその温かさに、仲間の大切さ、必要性を俺は知ってしまった。
今の俺はもうあの頃の人の温かさを知らない、孤独な俺には戻れないだろう。
エレノアは俺を救ってくれた、俺の聖女だ。
だが、エレノアは〝帝国の〟聖女であり、俺だけの聖女にはなってくれない。
俺のような誰かをエレノアは迷うことなく助ける。
自分のことのように心を痛め、涙を流し、時には怒り、時には解決のために身を削ってでも奔走する。
そして幸せそうに笑う誰かとその喜びを分かち合うように微笑むのだ。
俺ではない誰かに心を割き続けるエレノアに、俺の心は静かに沈んでいった。