だからアナタに殺されたい。



他の誰かの聖女でいないで欲しい。
俺だけの聖女であって欲しい。

そういつもエレノアに対して思っていた。

少しでも俺だけのエレノアであって欲しい。

その為に俺は毎日毎日、わざと怪我をした。
こうすれば、エレノアに会える。
治療の時間全てが俺のものになる。



「今日はここ?」



救護室で俺の目の前に座るエレノアが、伺うように俺の頬を見る。
俺はそんなエレノアにいつも通り少し眉を下げ、被害者のような顔をした。



「はい。痛いです」

「そう…」



俺の主張に、エレノアが呆れたように小さく笑う。
痛いわけがない、とわかっているその笑顔に、胸がきゅうと締め付けられる。

ああ、やっぱり、好きだ。



「痛いと思うけど我慢してね」



いつものように消毒薬を持つエレノアがわざとらしく微笑む。
その慈悲深い笑みに、また体温が上昇した。

けれど、この笑顔は俺だけのものではない。
慈悲深い笑みはみんなのものだ。

何故なら彼女は〝帝国の聖女〟で、みんなの聖女なのだから。



< 36 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop