だからアナタに殺されたい。
他の誰かの聖女でいないで欲しい。
俺だけの聖女であって欲しい。
そういつもエレノアに対して思っていた。
少しでも俺だけのエレノアであって欲しい。
その為に俺は毎日毎日、わざと怪我をした。
こうすれば、エレノアに会える。
治療の時間全てが俺のものになる。
「今日はここ?」
救護室で俺の目の前に座るエレノアが、伺うように俺の頬を見る。
俺はそんなエレノアにいつも通り少し眉を下げ、被害者のような顔をした。
「はい。痛いです」
「そう…」
俺の主張に、エレノアが呆れたように小さく笑う。
痛いわけがない、とわかっているその笑顔に、胸がきゅうと締め付けられる。
ああ、やっぱり、好きだ。
「痛いと思うけど我慢してね」
いつものように消毒薬を持つエレノアがわざとらしく微笑む。
その慈悲深い笑みに、また体温が上昇した。
けれど、この笑顔は俺だけのものではない。
慈悲深い笑みはみんなのものだ。
何故なら彼女は〝帝国の聖女〟で、みんなの聖女なのだから。